豊穣の女神の息子 山本純子
「おまえとこのかあちゃん
便所行ってから ちゃんと手ぇ洗(あろ)とんのけ」
と嫌がらせを言われて うどん屋の息子
「アホか洗とるわけないやんけ
うちのかあちゃんはな 歯ぁの間からきしめん出して
耳からは うどん出して
尻から そば出して売っとおんや
そこがうまさの秘訣やんけ」
敵もさるもの
「鼻からは 何(なん)も出さんのけ」
「鼻からはな 夏場 そうめん出しよる」
逞しき うどん屋の息子
家の商売からみのからかいは
逆手にとって
いちやく人気者になってしまう処世術を
これまでの人生で
すっかり身に付けている様子
彼の茶目っ気が描き上げた
母親の姿には
昔々の「古事記」の中の
穀物の起源の話が見えていて
ここに大気津比売(おおげつひめ)の神
鼻口また尻より
くさぐさの味物(ためもの)を取り出でて…
豊穣の女神の息子が
現代のこの校庭に
現われ出たわけです
いや~逞しいですね、この「うどん屋の息子」君は。
ナイス返し!
そして、つくづく、言葉は使いようだと思いますね。
もしこの子が、からかいに口ごもってしまったり、うつむいてしまったりしたら、
イジメになってしまうケースです。
そこを、ユーモアのセンスにあふれた、当意即妙の受け答えによって、
自分自身も、また相手をも救っているわけです。エライわぁ。